任意整理とは、借金等の支払義務を負っている人(債務者)が、支払先(債権者)との間で、債務の減額等の整理を、裁判所を通さずに、交渉をして行うことです。
具体的には、無理のない範囲で払っていけるように各債権者と交渉をして、新たな返済額や返済期間等を合意していきます。
債権者が貸金業者の場合は、任意整理をすると、借金については、利息制限法の利率で計算をし直すので(引き直し計算)、その結果、借金の額を減らせたり、過払いになっている場合には、貸金業者に対して逆にお金を返せと言えたりすることもあります(詳しくは過払金請求事件の項目を参照)。
また、貸金業者以外の場合でも、交渉によって減額してもらえることがあります。

任意整理事件

破産や民事再生等、裁判所を通した債務整理手続の場合は、色々な書類を用意して提出したり、場合によっては裁判所に行って事情を説明したりしなければならず、その分時間もかかりますが、任意整理の場合は、基本的にそのような必要はなく、裁判所を通さずに債権者と話し合いをするので、解決までの時間が短くなることもあります。
更に、破産や民事再生では、基本的に債権者全員に対して、手続の連絡がいくことになりますので、もし親族や勤務先等に債務のある場合には、これらの人達にも知られてしまいますし、ローン会社に連絡がいけば、自宅が競売にかけられたり、自動車を引き渡さなければならなかったりもします。
また、連帯保証人をつけている債権者に連絡がいけば、連帯保証人に対して、残金を一括で払えと請求をされることになります。
しかし、任意整理の場合は、例えば家や車だけは持ち続けたいとか、保証人に迷惑がかかるのは困るという場合に、その債権者だけを除外することができます(ただし、この場合は、その債権者に対しては、今までどおりに払い続けていく必要があります)。
また、任意整理では、破産と異なり、債務を負った原因は問わないので、ギャンブルや浪費等が原因の場合でも可能です。
支払方法についても、比較的柔軟に決めることができ、具体的には債権者との話し合いによって、計画を決めていくことになります。
そのため、例えば分割払いの回数を長くしたり、初回やボーナス月の支払を多くしたり、将来の利息はつけないでほしいというように、各自の希望を主張していくことも可能です。

他方、任意整理のデメリットの一番は、あくまで交渉に過ぎず、相手を合意に応じさせる強制力がないということです。
債権者も、破産をされて全く回収できなくなるよりは・・・ということで応じてくれる可能性があるだけで、当然ながら何でも聞き入れてくれるわけではありませんし、応じないと言い張られれば、それ以上はいかんともできません。
現実的な計画を立てた上で、あくまで交渉次第ということになります。
実際には、毎月生活を切り詰めて、借金の返済を続けていくのは大変ですし、途中で病気やケガ、失業等で収入がなくなったり、予定外の出費が生じたりすると、計画通りに返済ができなくなってしまうので、現実的には、やはり毎月無理のない金額で、数年程度で返していく計画を立てるのが通常です。
なお、任意整理は、学生やアルバイトでも可能ですが、このように何年にもわたって返していく以上、継続的な収入のあることが求められます。
他のデメリットとしては、いわゆるブラックリストに登録され、7年位は新規の借入やクレジットカードを作れなくなることです。

任意整理の大まかな流れは、
①弁護士への依頼
②各債権者への受任通知の送付(これで、通常は業者の取り立て等が一時的に止まります)と取引履歴等の請求
③債権者から送られた資料をもとに、債務総額を確定
④返済計画の作成
⑤債権者と交渉
⑥和解による合意
となります。

業者からの資料の交付状況、交渉の進展具合等にもよりますが、弁護士の受任から和解まで、おおむね半年以内には終わります(絶対に話がまとまるというわけではありません)。
その後、各債権者に対して、月々の返済を始めることになります。
なお、注意が必要なのは、
①負っている債務の種類が、借金かどうか(例えば、売買代金や建築の請負代金のような場合は、そもそも引き直し計算をする余地はないので、それによって金額が減ることもありません)
②借金であっても、消費者金融のように、利息制限法の利率を超えた利息の高いところから借りているのかどうか(この利率を超えていなければ、引き直し計算をしても金額は減りません)
③そのようなところから借りていても、貸し借りの期間が長いかどうか(短かったり、借りっぱなしで返していなかったりすれば、やはり引き直し計算をしても金額は減りません)
などの点です。
また、任意整理でも、現実には数年程度で返していかなければならないので、そもそも債務の総額が大きい場合には、月々の支払額が大きくてやはり払えない、ということもあります。
この場合には、任意整理ではなく、最初から破産や再生等を選択するべきでしょう。
なお、任意整理でも、基本的に破産や再生と同様に、税金や年金、社会保険料等の債務は対象になりません。
以上が、主な任意整理の内容です。

特定調停

任意整理と関連して、特定調停という手続もあります。
これは、債務者が裁判所に申し立てをして、債務を法律で認められた元本と利息の範囲まで減らす計算をし、これを今後分割で払っていくことで合意をするよう、債権者に求める手続です。
内容は任意整理と似ていますが、裁判所で行う手続なので、自分一人で直接債権者と話し合いをするよりも安心というメリットがある反面、申し立て費用が必要で、平日に裁判所へ行く必要もあります。
また、計算の結果、過払金の発生していることが判明した場合でも、この手続の中で払ってもらえるわけではなく、それは別に訴訟を起こすなどの必要があります。
期間は、およそ月1回程度の間隔で期日が入り、債権者の数等にもよりますが、だいたい申し立てから半年以内には終わるのが通常です(こちらも、絶対に話がまとまるというわけではありません)。
債権者との間で合意が成立した場合には、調停調書に記載されますが、これには裁判で和解をしたのと同じ効力があるので、もしその後に支払いが滞った場合には、給料や預金の差し押さえなどの強制執行をされてしまう危険があります(任意整理の場合は、裁判所を通さないので、公正証書等が作られない限り、その危険はありません)。
特定調停で合意をする際には、最後に払った日から和解した日までの利息等がつくのが一般的なようですが、任意整理では、これをつけないようにするのが一般的です。
任意整理も特定調停も、破産とは異なり、手続をした場合に特定の仕事(例えば、弁護士や税理士、警備員や保険の外交員等)に就けなくなるといったことはありません。

以上の通り、任意整理は破産や再生と並ぶ、債務整理の選択肢の一つになります。
任意整理の問題についても、お気軽にご相談ください。