少額訴訟は、支払督促と並んで、裁判所における、簡易な債権回収手続の一つです。
民事訴訟法368条以下に、規定がされており、以下、簡潔にご説明します。

<申し立てについて>
少額訴訟は、訴訟の目的の価額が60万円以下の、金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、簡易裁判所に対して、申し立てることができます。
ただし、同一の簡易裁判所において、同一の年に申し立てられる少額訴訟の回数は、10回までと上限が決められています。
少額訴訟による審理・裁判を求める申し出は、訴えの提起の際にしなければならず、その際には、その簡易裁判所において、その年にそれまで少額訴訟を何回求めたか、回数を届け出ることとされています(この点について、虚偽の届出をすると、10万円以下の過料に処せられることがあります)。

<審理について>
少額訴訟では、上記のように、簡易な手続が予定されているため、特別の事情がある場合を除いて、最初に行う口頭弁論の期日で、審理を完了しなければなりません(一期日審理の原則)。
そのため、反訴(被告(=訴えを起こされた人)が、逆に原告(=訴えを起こした人)を訴え返すこと)も、提起できません。
そして、当事者は、原則として、最初の期日以前(当日を含む)に、すべての攻撃・防御の方法を、提出してしまわなければなりません。
これらの証拠調べは、直ちにその場で取り調べることができる証拠に限って、許されます(「また今度に出します」とは言えない、ということです)。
証人の尋問もできますが、基本的に、最初の期日に、証人が法廷に居合わせている必要があります。

なお、被告にとってみれば、簡素な少額訴訟の手続ではなく、通常の訴訟手続で、じっくりと審理をして、判決をしてもらいたい、という場合もあるでしょう。
そこで、被告は、少額訴訟を、通常の手続に移行させる旨の申し出をすることも、認められています。
ただし、この申し出は、被告が、最初にするべき口頭弁論の期日において、弁論(主張)をし、またはその期日が終了してしまった後は、もうできませんので、その前にする必要があります。
適法にこの申し出があると、訴訟は、通常の手続に移行します。
また、被告が、このような申し出をしなくても、訴訟の目的の価額が60万円を超えていたとか、原告による、その年の少額訴訟の申し立ての通算回数が10回を超えていた場合等、一定の場合には、同様に、通常の手続に移行します。

<判決について>
判決の言い渡しは、裁判所が、相当でないと認める場合を除き、原則として、口頭弁論の終結後、直ちになされます。
また、裁判所は、請求を認容する判決をする場合において、被告の資力や、その他の事情を考慮して、特に必要があると認めるときは、判決の言い渡しの日から3年を超えない範囲内において、金銭の支払時期を遅らせる定めや、分割払の定め等をすることもでき、柔軟な解決が図れるような制度とされています。
請求認容判決の場合は、裁判所は、職権で、担保を立てて(一定の金銭等を供託させること)、または立てないで、仮執行(仮の強制執行)をすることができることを、宣言します。
少額訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることはできませんが、不服のある側は、これに対して、判決書等の送達を受けた日から2週間以内に、その判決をした裁判所に、異議を申し立てることができます。
適法な異議があったときは、少額訴訟は、口頭弁論の終結前の状態に戻り、以後は、通常の手続によって、その審理・判決をすることになります。
そこでなされた終局判決に対しては、控訴をすることができず、それが最終的なものとなります。

以上の通り、少額訴訟は、被告が通常訴訟への移行を希望しなければ、原則として、一回で終わり、判決に対しても、一方が異議の申し立てをしなければ、終了して、強制執行の手続へと進めるので、通常の訴訟よりも簡素で、負担は少なく、債権回収にあたっては、選択肢の一つとして、検討すべき手続といえます。

少額訴訟の問題についても、お気軽にご相談ください。