電子消費者契約法は、正式名称は「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」といいます。
この法律は、消費者が行う電子消費者契約の要素に、特定の錯誤(勘違い)があった場合や、隔地者(対面しておらず距離を隔てている人)同士の契約において、電子承諾通知を発する場合に関して、民法の特例を定めるものです。
簡単にいえば、パソコンのインターネットショッピングで、商品の注文をしたような場合の、契約の成立についての規定です。
以下、簡潔に、その内容をご説明します。

この法律上、「電子消費者契約」とは、消費者と事業者との間で、電磁的方法により、電子計算機(パソコン等)の画面を通して締結される契約で、事業者またはその人から委託された人が、その画面に手続の表示をし、消費者がそれに従って、自分の使用する電子計算機を用いて、送信をすることによって、その申し込みや承諾の意思表示を行うもの、をいいます。
要するに、イメージとしては、上記のようなインターネットショッピング等です。

また、「消費者」とは、個人(ただし、個人が事業として、または事業のために、契約の当事者となる場合は除かれます)をいい、「事業者」とは、法人その他の団体や、事業として、または事業のために、契約の当事者となる場合における「個人」をいいます。

また、「電磁的方法」とは、電子情報処理組織を使用する方法、その他の情報通信の技術を利用する方法をいい、「電子承諾通知」とは、契約の申し込みに対する承諾の通知で、電磁的方法のうち、契約の申し込みに対する承諾をしようとする者が使用する電子計算機等(パソコン、ファクシミリ等)と、その契約の申し込みをした者が使用する電子計算機等とを接続する、電気通信回線を通じて、送信をする方法によって行うもの、をいいます。
定義は、たいへんややこしいのですが、法律上は内容を明確にしておく必要があると同時に、コンピューターを用いた実際の取引の仕組みを、日本語で説明しようとすると、どうしてもこうなってしまうのは否めません。

本題に戻ります。

民法95条は、意思表示について、原則として、法律行為の要素(重要な点)に錯誤(勘違い)があったときは、契約を無効としつつ、例外的に、意思表示をした人に重大な過失(不注意)があったときは、その人は、自らその無効を主張することができないと規定しています。

しかし、消費者が行う、電子消費者契約の申し込み、またはその承諾の意思表示の場合は、以下の通り、これが修正されています。
すなわち、その電子消費者契約の要素に錯誤があった場合で、その錯誤が、
①消費者が、その使用する電子計算機を用いて送信をした時に、その事業者との間で、電子消費者契約の申し込み、または承諾の意思表示をする意思がなかったとき、
②消費者が、その使用する電子計算機を用いて送信をした時に、その電子消費者契約の申し込み、または承諾の意思表示と異なる内容の、意思表示をする意思であったとき、
のどちらかに該当するときは、原則として、錯誤無効の主張が可能となります。
これは、コンピューター等による場合には、うっかり申し込みのクリックをするおそれがあること等を、考慮したものといえます。

ただし、
①その電子消費者契約の相手方である事業者等が、その申し込み、または承諾の意思表示に際して、電磁的方法により、その画像を通して、その消費者の申し込み、もしくは承諾の意思表示を行う意思の有無について、確認を求める措置を講じた場合、
②その消費者から事業者に対して、そのような措置を講ずる必要はないという意思の表明があった場合、
には、錯誤無効の主張はできなくなります。
①については、例えば、「申し込みの内容は、この通りでよろしいですか?」と、念を押す画面が表示されたような場合のことです。
ですので、パソコン等での契約については、よくよく注意をするにこしたことはありません。

次に、民法526条1項は、隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する、と定めています。
また、民法527条は、申し込みを撤回するという通知が、承諾の通知を発した後に到達した場合であっても、通常の場合であれば、それよりも前に到達するであろう時に発送したものであることを知り得るときは、承諾した人は、申し込んだ人に対して、遅滞なく、申し込みが延着したことの通知を発しなければならないとし、承諾した人が、この通知を怠ったときは、契約は成立しなかったものとみなす、と定めています(ちょっと、ややこしいですね)。
しかしながら、隔地者間の契約において、電子承諾通知を発する場合については、これらの民法の規定は適用しないとされています。
したがって、要するに、隔地者間の契約は、承諾者の承諾の通知が相手に届いた時に成立する、ということになります。

インターネットショッピング等は、家などにいながら利用のできる、便利なものではありますが、店頭で実物を見て取引をする、あるいは直接相手と対面して取引をする、といった態様ではないため、その性質から起こるトラブルもあるので、慎重さもお忘れなく。

コンピューターによる契約の問題についても、お気軽にご相談ください。