給料

 景気の悪化に伴い、給料や残業代等の金銭トラブルも、増えています。
 このような、使用者から労働者に支払われる賃金(給料、手当、賞与等)については、労働基準法等の法令や、判例によって、規律がされています。
 特に、労働基準法は、その基準以下の労働条件を契約で定めても、その部分は無効となります。
 本来は、使用者と労働者は対等な立場で労働条件を決めるべきなのですが、実際には使用者の方が強いので、あくまで当事者の話し合いで決めればよいとすると、労働者は通常、不利な条件を強いられます。
 そこで、法律によって、最低限の基本的な条件を定めることとされました。
 労働契約法や労働組合法等も、労働関係上は重要な法律です。
 以下、使用者と労働者との間の、賃金に関する事項を、簡潔に記します。

賃金

 使用者は、労働者の国籍、信条、社会的身分、女性であることなどを理由として、賃金を差別することは、できません。
 また、使用者は、労働契約を結ぶ際に、賃金について、書面で明らかにしなければならず、あらかじめ違約金を定めたり、損害賠償の金額を予定しておいたりすることも、できません。

 賃金の支払は、原則として、①通貨で、②労働者に直接、③全額(税金や社会保険料等の控除は可)を、④毎月最低一回以上(賞与等は除く)、⑤一定の決まった日に、払わなければなりません。
 使用者は、賃金の支払にあたって、前借金など、労働をすることを条件として労働者に貸したお金を、賃金から差し引いたり、労働者に強制的に貯金させたりすることも、できません。
 
 賃金は、あくまでも労働に対する報酬なので、欠勤、遅刻、ストライキ等の場合には、払う義務はありませんが、年次有給休暇、休業手当(会社の都合で働けない場合の手当)等については、労働をしなくても払われます。
 賃金の額については、最低賃金法によって、下限が定められています。

割増賃金

 使用者は、労働者に対し、原則として、休憩時間を除いて、1日8時間、1週間に合計40時間を超えて、労働をさせてはなりません。
 また、原則として、毎週少なくとも1回(4週間で4日以上)は、休日を与えなければなりません。
 これを超えると、いわゆる残業代の問題が出てきます。

 まず、使用者は、この時間を超えて(時間外労働)、あるいは休日に労働(休日労働)をさせるには、労働組合等との間で、書面で協定を結ぶこと(労使協定=いわゆる36協定)等が必要です。
 そして、超過時間分または休日労働分について、通常の賃金の、25~50%の範囲内で割り増した賃金を、払わなければなりません(時間外労働が、1か月に60時間を超えた場合は、50%以上です)。
 また、原則として、午後10時以降の深夜に労働をさせた場合にも、やはり通常の25%以上を割り増した賃金を、払わなければなりません。
 時間外または休日労働が、深夜に及んだ場合は、それぞれのパーセンテージが合算されます(時間外労働と休日労働は、合算されません)。
 年俸制の場合であっても、割増賃金の支払は、必要です。
 なお、事業の監督・管理の地位にある人については、これら割増賃金等の規定は、適用されません(年次有給休暇の規定は、適用されます)。

賃金の切り下げ

 不景気による賃金カットの話も、よく聞くところです。

 賃金の額も、いったん合意が成立して、有効に契約の内容となっている労働条件であり、労働者にとって重要なので、その切り下げには、本人の同意が必要であるのが原則です。
 ただ、就業規則の変更や、労働協約の改定等によって、切り下げが認められる場合もあります。
 この場合、
  ①不利益変更の必要性・合理性があるか(会社の経営状態が、本当に良くないのか等)、
  ②不利益変更の内容(労働者の不利益は、どの程度重大なのか等)、
  ③変更をするにあたって、適切な手続がとられたかどうか(組合等との間で、充分な交渉・検討がなされたかどうか等)、
その他の点を総合的に検討した上で、認められるかどうか、個別に判断がされることになります。
 使用者としては、労働者に、切り下げの理由を充分に説明するなど、労働者の合意が得られるように努める必要があるでしょう。

その他

 労働者の死亡・退職等の場合には、使用者は、原則として、請求を受けてから7日以内に、賃金等を払わなければなりません。
 賃金の未払いは違法であり、これに反した場合、使用者は、労働基準監督署から支払の勧告を受けたり、悪質な場合は、刑事裁判で有罪とされたりすることもあります。
 賃金等の未払いについて、労働者としては、労働組合に相談するなどして、使用者に請求をしたり、労働基準監督署に相談したり(都道府県労働局長による助言・指導や、紛争調整委員会によるあっせん等の制度もあります)、労働審判や訴訟等の法的手続をとったりすることが、考えられます。
 このような場合には、労働契約書、給与明細、タイムカード、就業規則、労働協約等の各種証拠や、会社との交渉経緯のメモ等が、証拠となってきます。
 未払賃金の請求権は2年、退職手当の請求権は5年で、それぞれ時効となり、以後は請求ができなくなります。

 未払賃金・残業代の問題についても、お気軽にご相談ください。