企業や個人の間で、契約を締結する際には、付き合いが長かったり、力関係に差があったり、業界の慣行であったり、あるいは面倒であったり等の色々な理由で、契約書が作成されていない場合も散見されます。
契約書の作成は、必ずしも契約の要件とはされていませんが(保証契約等のように、書面が必要な場合もあります)、作成をしていない場合、何事もない間はそれで良いのですが、いざトラブルが起きて、もめてしまった場合に、「このように約束をしていた」「していない」の水掛け論になることは、容易に想像がつくと思います。
だからこそ、契約書を作成することは、大いに推奨されます。

契約書を作成すること自体も重要ですが、そこに定めた内容は、法規や公序良俗等に反しない限り、当事者を拘束します。
なので、当然ながら、ただ契約書を作成するのみではなく、そこにどのような定めを置くかも、たいへん重要な問題です。
契約書に定めていない事項については、商法、商慣習法、民法等を解釈適用して、判断がなされるので、トラブルが起きた際に、必ずしも自己に有利な結論になるとは限りません。
したがって、極力自己に有利になるように、あるいは不利にならないように、各条項を定めたり、特約を入れておいたりということも(もちろん、相手方の意向もあることですし、上記のように法規等にも拘束はされるので、どんな内容でも入れておけるとは限りませんが)、作成時に検討をする必要があります。
なお、事業者が消費者を相手とする契約の場合には、別途消費者契約法等の適用もあり、消費者の保護が図られています。
ここでは、以下簡潔に、商法上の契約のルールを紹介します。

商人は、契約の申し込みを受けた場合、基本的には早く返事をしないと、その申し込みは効力を失います。
ただし、日常的に取引をする者から、その営業の部類に属する契約の申し込みを受けた場合は、遅滞なく承諾をするかどうかの通知を発しないと、申し込みを承諾したものとみなされます。

数人の者が、その一人または全員のために商行為となる行為によって、債務を負担したときは、その債務は、当然に連帯債務となりますし、保証人がいる場合に、主債務が主債務者の商行為によって生じたものであるとき、または保証が商行為であるときは、当然に連帯保証となります。

商人は、その営業の範囲内で他人のために行為をしたときは、適切な額の報酬を請求できます。
商人間で金銭の貸借をしたときは、貸主は年6分の法定利息を請求できます。
商人が、その営業の範囲内で他人のために金銭の立替をしたときは、立替日以後の法定利息を請求できます。

商行為によって生じた債務の履行場所が、その行為の性質や当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しは、行為時にその物が存在した場所で、その他の債務の履行は、債権者の現在の営業所(営業所がない場合は住所)で、それぞれしなければなりません。

基本的に、商人の場合は、商売事のプロであるという扱いがされており、他にも商事留置権があること、商行為によって生じた債権の消滅時効の期間が、原則5年と短くなること(民法等でこれより短い定めがあるときは、そちらが優先されます)、売買契約により目的物を受領したときは、遅滞なくそれらを検査しなければならず、瑕疵や数量不足を発見したとき(直ちに発見することのできない瑕疵の場合には、6箇月以内にその瑕疵を発見したとき)は、直ちに売主に通知を発しなければ、契約の解除や代金減額、損害賠償等の請求ができないこと等、契約に関して、個人の場合とは異なる規律が色々と存在するので、注意が必要です。

契約の問題についても、お気軽にご相談ください。