少年が刑事事件を起こした場合の手続については、少年法に規定がされています。
以下、簡潔にご説明をします。
少年法上、少年とは、20歳未満の人をいいます。
少年は、まだ若く、成長途中であり、一般に犯罪傾向も進んでおらず、教育によって矯正できる余地が大きいものと評価されています。
少年事件では、少年に対するこうした考え方が基本にあるため、成人の場合とは色々と異なる取り扱いがされています。
概括的にいえば、少年の心身への影響に対する配慮が、成人の場合よりも、色濃く見られます。
逮捕・勾留
少年が罪を犯した場合、警察官が、少年を逮捕して、取り調べ・供述調書の作成や、証拠の収集等の捜査をする必要があることは、成人の場合と同じです。
ただし、少年の場合は、成人のように、何週間も警察署の留置場や、拘置所等に拘束しておくこと(勾留)は、少年の心身への影響等を考えると、あまり好ましくはありません。
また、少年の場合は、巧妙に逃亡や証拠の隠滅を行う可能性も、比較的小さいといえます。
そのため、少年法には、勾留に代わる観護措置として、10日間に限られ、延長のない身柄拘束方法が定められているほか、少年の勾留は、やむを得ない場合に限られますし、警察署の留置場等への収容は、他に留置されている大人等からの接触・悪影響等を避けるべく、他人とは分離されます。
なお、少年が逮捕後に当番弁護士を依頼したり、一定の軽い罪の事件を除き、勾留後に国選弁護人を選任してもらったりすることができるのは、成人の場合と同様です。
観護措置
捜査を終えた検察官は、少年が罪を犯したと考えるときは、少年を、家庭裁判所(少年が14歳未満の場合には、児童相談所)に送ります。
家庭裁判所は、これを受けて、審判を行うために必要があるときは、少年を、少年鑑別所に送ります(観護措置)。
この期間は、1回あたり2週間までとされていますが、その後に1回更新されて、合計4週間となるのが通常です。
そして、鑑別所の職員や、家庭裁判所の調査官が、少年の特性や能力等について、調査をし、資料や意見を作成します。
審判
そのように作られた資料や意見のほか、警察や検察で収集・作成された証拠・資料等をもとに、観護措置の期間が満了する前に、家庭裁判所で審判が開かれます。
審判は、原則として、非公開です。
審判には、少年や保護者が出席して、裁判官や調査官からの質問・応答などを経て、最終的に、裁判官が少年の処分を言い渡します。
成人の刑事裁判では、有罪か無罪、有罪ならば死刑や懲役刑、罰金刑等に処せられますが、審判では、原則として刑罰が科されるのではなく、少年院へ送ったり、保護観察にしたり、あるいは処分をしないなどの決定が、なされます。
少年が事実を争う場合には、証人尋問や鑑定など、刑事裁判と同様の手続がなされることもあります。
なお、例えば殺人罪等の重大な事件では、たとえこれを行ったのが少年であっても、調査の結果、家庭裁判所が刑事処分にするのを相当だと考えれば、家庭裁判所から検察官に送られて(逆送)、成人の場合と同じように、刑事裁判が行われることがあります。
また、このように罪を犯した少年のほか、たとえ罪を犯していなくても、保護者の言うことを聞かず、家庭に寄りつかず遊び歩いている等の事情から、将来罪を犯す等のおそれのある少年(ぐ犯少年)等も、この審判手続を受けることがあります。
抗告
裁判所が審判で言い渡した処分に対しては、その内容に重大な事実の間違いがあったり、処分があまりにおかしかったり等の一定の場合に限り、抗告手続により、これを争うことができます(更に争う場合は、再抗告)。
これらの場合には、上級の裁判所が、その点について判断をします。
少年事件における、弁護士の主な活動としては、上記の一連の手続について、少年が家庭裁判所に送られるまでは、弁護人として、送られた後は付添人として、いずれも少年のサポートをすることです。
具体的には、成人の刑事事件の場合と同様に、少年が身柄を拘束されている警察署等へ面会に行き、事情を聴いて、今後の見込みを説明したり、アドバイスをしたり、少年に有利な証拠を集めたり、被害者に弁償をして、示談をしたりします。
また、家庭裁判所に送られて観護措置をとられた場合には、やはり、少年に有利な証拠を裁判所へ提出したり、保護者や勤務先の社長等に、今後の少年の監督や審判への出席を頼んだり、審判の際に、少年の言い分を代弁したり等の活動を行います。
少年事件についても、お気軽にご相談ください。