弁護士は、争いの当事者や、それに関係する人の依頼によって、交渉、訴訟(裁判)等のほか、役所に対する不服申し立て等、一切の法律事務を行うことを、職務としています。
つまり、法律の関係する事務であれば、得意・不得意は別として、広く取り扱うことができます。
事件は、本当に簡単にいえば、民事と刑事とに大別でき(細かくいえば、家事、商事、行政等の事件もあり、そこからも更に細分化はされますが)、ここでは、この2つを簡単にご説明します(個別の分野については、各業務内容の説明をご覧ください)。
民事事件
まずは、民事事件です。
例えば、物を売ったのに、相手が代金を払わないとします。
このような場合、普通はまず、払ってくれと相手に言って、話し合います。
そこですんなり払ってもらえれば、無事解決です。
ところが、相手に何か言い分があったり、拒否をされたりすると、必ずしもうまくまとまるとは限りません。その場合は、どうしますか。
むりやり相手から代金を取り上げたり、売り渡した物を取り戻したりすれば良い、と思う人もいるかもしれません。
しかし、少なくとも日本では、これは違法(ときには犯罪)となる可能性があります。
最悪の場合、警察に逮捕され、刑事裁判にかけられてしまいます(これが刑事事件です)。このような場合のために、日本では裁判所・裁判制度が用意されています。
すなわち、裁判所に対して、申し立てをし、事情を説明し、証拠を提出して、間に入って話をまとめてもらったり(調停)、「代金を払え」という判決を出してもらったり(訴訟)します。
こうして、調停や判決が成立すると、これがいわば、「あなたには代金を払ってもらう権利がありますよ」という、国からのお墨付きになります。
それで、相手の持っている土地や建物(不動産といいます)、自動車、給料、貯金等の差し押さえが可能となり、代金を回収できるわけです。しかしながら、これらの作業は、現実には、結構大変です。
普段、このようなトラブルに遭ったことのない人は、相手に請求しようにも、請求の仕方や、裁判の起こし方・進め方等も、よく分からないかもしれません。
また、裁判所が開いているのは、他の役所と同様、平日の日中だけなので、仕事をしている人は、裁判所に出向く時間も、とれないかもしれません。
そこで、これらの作業をまかせて、代わりに行うのが、弁護士です。弁護士の主な仕事は、こうしたトラブルを法的に解決するための、お手伝いです。
当然ながら、皆さんが請求をする場合だけでなく、請求される側になった場合でも、弁護士に依頼することができ、その場合には、やはりその人の立場での言い分を、十分に主張していくための手助けを、することになります。
これは、裁判になった後だけでなく、裁判になる前の、話し合いの段階で、弁護士に相談したり、代理人に選任したりすることも、可能です。
さらには、まだ相手と何のトラブルにもなっていない段階で、サポートを依頼することも、可能です。
例えば、「これから新たな契約をしようと思っているが、相手が作った契約書の内容でサインをしても大丈夫だろうか?」というケースや、高齢の方が、「今後の相続に備えて、遺言書を作りたいが、どうすれば法律的に問題のないものを作れるだろうか?」というようなケース等です。
このような場合にも、相談にのったり、書類の内容をチェックして、ここはこうした方が良いとアドバイスをしたり、代わりに書類を作ったり、契約の場に立ち会ったりすることによって、後のトラブルを予防することもできます。これが、民事事件における、弁護士の仕事です。
刑事事件
例えば、犯罪をしたと疑われている人(被疑者)が、いるとします。
その人は、最悪の場合、警察に逮捕され、その後しばらくの間、ずっと警察署の留置場等に、身柄を拘束されてしまいます。
その間(多くは約3週間程度)は、原則として、自由に外には出られず(当然、仕事や学校にも行けません)、警察官や、検察官(検事)の取り調べを受けるなど、捜査が続きます。
その後、検察官が、処分をどうするかを決めますが、正式な裁判を起こされてしまうと(起訴)、その人(被告人)は、裁判所が外に出てもよいと認める(保釈)までは、原則として、その後もずっと、身柄の拘束をされ続けます。
そして、裁判を続けていき、最後には、有罪や無罪の判決が出されます(なお、被疑者が少年の場合は、原則として裁判手続ではなく、家庭裁判所の審判手続に進んでいきます)。この、最終の処分が決定されるまでの期間、被疑者・被告人に、法的なアドバイスをしたり、その言い分を一緒に主張したり、早く外に出られるようにしたり、被害弁償活動を行ったり等の弁護活動を行うのが、刑事事件における、弁護士の仕事です。
以上、たいへん大まかに、民事と刑事の例を紹介しましたが、弁護士の仕事は、もちろんこれだけに限られません。
弁護士の仕事は、人が生まれてから亡くなるまで(場合によっては、生前や死後までも)の、人生全般に関係するといっても過言ではないほど、広範囲に及び、様々な分野で、相談・依頼が可能です。
ご自身の直面している問題が、そもそも法律事務(弁護士の対象とする仕事)に該当するのかどうか、分からないような場合でも、お気軽に、弁護士へお尋ねください。