皆さんも、色々な契約に関して、連帯保証人という言葉を聞いたことがあると思います。
保証人というのは、主たる債務者が、その債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う人のことで、保証債務については、民法446条以下で定められています。

保証契約は、書面でしなければ、効力を生じません(民法446条2項)。
その趣旨は、保証契約が、無償で情義に基づいて行われることが多いことや、保証人が、自己の責任を十分に認識していない場合が少なくないこと等から、保証を慎重にさせるという点にあります。

この保証契約について、リース契約書の連帯保証人欄に署名押印をしたのは自分ではなく、第三者に権限を授与して、署名押印を代行させたこともないとして争われたのが、東京高裁平成24年1月19日判決です。
このように、「その契約書の署名押印は、自分がしたものではない」と言って、争うケースは、時々生じます。
この事案では、業者側は、その従業員が本人に電話をかけて、受話者が本人であることを確認した上で、本件リース契約の内容と、本人の保証意思を確認したと主張しました。

この事案では、裁判所はまず、おおむね
「民法446条2項は、保証契約を成立させる意思表示のうち、保証人になろうとする者がする、保証契約の申し込み、または承諾の意思表示を、慎重かつ確実にさせることを主眼とするものということができるから、保証人となろうとする者が、債権者に対する保証契約の申し込み、または承諾の意思表示を、書面でしなければその効力を生じないとするものであり、保証人となろうとする者が、保証契約書の作成に主体的に関与した場合、その他その者が、保証債務の内容を了知した上で、債権者に対して、書面で明確に保証意思を表示した場合に限り、その効力を生ずることとするものである。
したがって、保証人となろうとする者がする、保証契約の申し込み、または承諾の意思表示は、口頭で行ってもその効力を生じず、保証債務の内容が明確に記載された保証契約書、またはその申し込み、もしくは承諾の意思表示が記載された書面に、その者が署名もしくは記名をして押印し、またはその内容を了知した上で、他の者に指示ないし依頼をして、署名ないし記名押印の代行をさせることにより、書面を作成した場合、その他保証人となろうとする者が、保証債務の内容を了知した上で、債権者に対して、書面で上記と同視し得る程度に、明確に保証意思を表示したと認められる場合に限り、その効力を生ずるものと解するのが相当である」
としました。

その上で、本件では、
①本件の保証契約書面は、契約書のみであるが、その連帯保証人欄の氏名が本人の自署であること、または同氏名の下の印影が、本人の押印によるもの、もしくはその指示に基づいて、本人の印鑑によって顕出されたものであることを、認めるに足りる証拠はないこと、
②かえって、証拠等によれば、他の第三者が同欄に本人の氏名を記載し、別の所に保管して使用されていた本人の認印が、そこに押されたものであることや、その場に本人は同席しておらず、上記行為を指示したり、依頼したりしたわけでもなかったことが認められること、
③業者の従業員(保証意思の確認担当者)が作成した電話記録には、本人の自宅に電話をかけて出た女性に対し、氏名、生年月日、保証意思を確認したこと等が記載されているが、そこには、「保証意思」として、「Yes」等と記載されているのみで、当該従業員と電話に出た女性との間で、具体的にどのようなやり取りがあったのか明らかでなく、本人も、上記のような電話を受けたことはない旨を尋問で供述していること等から、電話に出た女性が、本人であったか否かについて疑念があること、上記電話の際、保証契約書を作成することや、本人名義の署名押印を他の第三者に代行させること等について、話がされた形跡はないこと、本人が保証契約書の作成を承諾しながら、その署名を他人に代行させたり、自分の印鑑を使わずに、他所で使用されていた認印で代用させたりする理由も見当たらないこと等に照らせば、電話記録に上記のような記載があっても、本人が、他の第三者に署名押印を代行させて、本件契約書を作成することを承諾していたとの事実を認めるに足りないこと、
④他に、本件契約書の本人作成名義部分が、本人の意思に基づいて作成されたことを認めるに足りる証拠はないこと、
等からして、本件保証契約は、書面でされたものということができないから、その効力を有しないものというべきである、と結論づけられました。

この裁判例は、認定した諸々の間接的事情から、連帯保証契約の成立について、否定の判断をしたものです。

保証契約は書面でしなければなりませんが、この裁判例からも分かる通り、形式的に書面があれば良いというものではなく、債権者もしっかりと本人の確認・意思の確認をして、保証人本人から直接署名押印をもらうなど、慎重に進めなければ、後で保証契約が無効とされるおそれがあるので、要注意です。