最高裁平成23年7月7日判決は、公立高校の卒業式に、来賓として出席した、元教諭である被告人が、開式前に、会場の体育館内で、教頭の制止に従わずに、ビラを配ったり、保護者らに大声で、「国歌斉唱のときには、できたら着席してほしい」と呼び掛け、被告人を移動させようとした教頭や校長に対し、怒号して抵抗し、体育館から退場後も、隣接する廊下で、抗議を続けるなどした結果、卒業生が、予定より遅れて入場し、2分遅れの開式となった事案について、威力業務妨害罪に問われたものです。

最高裁は、おおむね、「被告人が、大声や怒号を発するなどして、高校が主催する卒業式の円滑な遂行を妨げたことは、明らかであるから、被告人の本件行為は、威力を用いて、他人の業務を妨害したものというべきであり、威力業務妨害罪の構成要件に該当する」と判示しました。
また、最高裁は、このような行為を罪に問うことが、表現の自由を保障する憲法21条1項に違反するのではないかという点について、「表現の自由は、民主主義社会において、特に重要な権利として、尊重されなければならないが、憲法21条1項も、表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため、必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ意見を外部に発表するための手段であっても、その手段が、他人の権利を不当に害するような場合は許されない。被告人の本件行為は、その場の状況にそぐわない、不相当な態様で行われ、静穏な雰囲気の中で執り行われるべき卒業式の円滑な遂行に、看過し得ない支障を生じさせたものであって、こうした行為が、社会通念上許されず、違法性を欠くものでないことは明らかである。したがって、被告人の本件行為をもって、刑法234条の罪に問うことは、憲法21条1項に違反するものではない」と判示しました。

これは、公立高校の卒業式のケースでしたが、入学式や入社式等、他の式典であっても、同様に妨害をすれば、このような有罪判決を受けるおそれがあります。
毎年、成人式の最中に、騒ぐ新成人等もニュースで見ますが、それらも同様に、威力業務妨害罪の成立し得る行為でしょう。