ここでは、刑事事件の流れについて、ざっとご説明をします。

 例えば、何らかの犯罪を行ったと疑われている人(被疑者といいます)が、いるとします。

被疑者の弁護活動

逮捕・勾留

 被疑者は、ごく軽い罪の場合等を除いて、多くの場合、警察に逮捕されます。
 それに引き続いて、勾留(こうりゅう。原則10日間、延長されるともう10日間)もされると、最長約23日間は、警察署等の留置場に身柄を拘束されてしまいます。
 その間は、警察官や検察官(検事や副検事)の取り調べを受けるなど、捜査が続きます。
 当然、自由に外には出られず、仕事や学校に行くことも、できません。
 家族等との接見(面会)も、事件の内容や、本人の供述内容等によっては、禁止されることもあります(接見禁止)。
 逮捕については、多くは新聞やテレビで、報道されもします。
 これは、本人にも家族等にも大変つらいものです。
 なお、相談できる弁護士がいないような場合には、弁護士が、初回は無料で警察署等へ接見に来て、相談にのってくれる「当番弁護士」制度もあるので、必要であれば、弁護士会に連絡をし(逮捕された本人が依頼をする場合には、警察官に、当番弁護士を頼みたいと言えば、弁護士会を通じて派遣されます)、まずはアドバイスを受けることが大切です。
 また、一定の軽い罪の事件を除いて、被疑者は、弁護士を頼むお金のない場合、勾留後であれば、国に弁護人(国選弁護人)を付けてもらうことができます(ただし、場合によっては、後の有罪判決の際に、その費用は自分で負担するよう、命じられることもあります)。

捜査

 捜査の中で、警察官や検察官は、証拠を収集すると共に、刑事手続上必要な、関係書類を作成します。
 その中でも、とりわけ重要なのが、彼らが被疑者の供述を聴取して、作成した書面(供述調書)です。
 この調書は、検察官が、最終的な処分を決める上での参考になるのはもちろんのこと、ひとたび被疑者が署名・押印(指印が通常です)をすると、後に裁判になった際に、裁判官の判断に、絶大な影響を与えます。
 要するに、裁判官に、基本的にその調書の内容は本当だろう(嘘が書かれているなら、被疑者は異を唱えて、署名押印をしていないはずだろう)と信用される、ということです。
 そのため、被疑者は、この調書の内容に、限りなく注意を払う必要があり、内容をよく確認して、言っていないことや、間違っていることが書かれていれば、作成者に訂正を求め、訂正に応じてもらえない場合には、署名・押印を拒否することができます。
 仮にこれをせずに、内容が自分の言ったことと違うのに、あるいは事実と違うのに、そのまま署名押印をしてしまうと、後で裁判官は分かってくれるだろうと思っても、それは上記のように困難です。
 警察官も検察官も、取り調べのプロであり、それが仕事ですから、根掘り葉掘り、細かいところまで、つじつまが合っているかを聞いてきたり、時になだめたりすかしたり、あの手この手で自白を迫ってきます。
 罪を認めている事件(自白事件)の場合は、そこまで執拗な取り調べはありませんが、例えばそんな犯罪はしていない、人違いだ、えん罪だ、と言って、犯行を認めていない事件(否認事件)の場合は、必然的に取り調べの回数も時間も増えてきます。
 被疑者としては、嘘の自白をしてしまわないよう、勾留期間を耐え抜かなければなりません。

起訴など

 その後、捜査が一通り終わると、検察官が、最終的な方針を決めます。
 その種類としては、裁判所に申請をして、法廷での正式な審理・判決を求める処分(起訴)、簡素化した裁判手続で、執行猶予の付く判決を求める処分(即決裁判請求)、より簡素な手続で、罰金刑にするよう求める処分(略式命令請求)、犯行は認められるが、軽い内容で反省や示談もしているということでお咎めなしとする処分(起訴猶予)、どうも犯人ではないらしい、あるいはその証拠がないということで、罪を問わない処分(不起訴)、などがあります。

起訴後

 起訴をされたら、それ以降は法律上、被疑者ではなく、被告人と呼ばれます。
 起訴後も原則として、裁判所へ申請をして、外に出てもいいよという裁判(保釈)をもらえない限りは、警察署や拘置所等に身柄を拘束された状態が、続きます。
 保釈は、後の裁判で執行猶予判決が見込めそうな場合等は、認められることが多いですが、必ず認められるというわけではなく、最低150万円前後からの保釈保証金も、用意をする必要があります。
 これは、被告人が後の裁判へ出頭しなかったり、証拠隠滅行為を行ったり等、裁判所の定める条件に違反する行為をした場合に、没取され得るお金で、これによりそのような行為を戒める趣旨のものです。

公判

 裁判の当日は、検察官が、被告人がこんな犯罪をしたという証拠を、色々と裁判所に提出します。
 被告人は、犯罪をしたことが事実であり、それらの証拠も、自分の行った犯罪を正しく表していれば、その通りだと認めます。
 他方、被告人も、示談ができていれば示談書、弁償ができていれば領収証や振込証など、自分に有利な証拠を裁判所へ提出します。
 また、今後自分を監督してくれるという人に、法廷に出てもらって、そのような趣旨を証言してもらったり、自分でも法廷で更生の意欲等を述べてもらったりします。
 その上で、裁判所は、それらの資料を元に、判決をすることになります。

 こうして、自白事件の場合は、裁判も、おおむね3か月以内には終わります(ただし、犯罪をいくつも行っている場合は、その分手続も長くなります)。

 他方、否認事件の場合には、展開が変わります。
 検察官の提出する証拠には、通常は「この被疑者にやられた」(被害者の言い分)とか「この被疑者がやったのを見た」(目撃者の言い分)などと書かれているので、被告人は、もしそれが事実と違うのであれば、捜査段階はもちろん、法廷においても、そのように主張をして、それらの証拠が採用されるのを、拒否しなければなりません。
 そうすると、調書は直ちには採用されず、被害者や目撃者を裁判所に呼んで、真実はどうなのかを話してもらい(尋問)、吟味をすることになります。
 このように争って、最終的に、裁判所が真実はどうなのかを判断し、判決を言い渡します。
 こうした否認事件の場合は、自白事件の場合よりも、裁判期間が長引くのが一般的です。

 なお、殺人罪や強盗致死罪等、一定の重大な事件の場合は、原則として、いわゆる裁判員裁判になります。

上訴

 もし、言い渡された判決に不満がある場合には、控訴・上告という手続により、判決のここがおかしいという主張を、していきます。
 この場合、上級の裁判所が、その主張の真否を判断します(が、上訴審で、第一審判決の内容が覆ることは、少ないのが実状です)。

 以上が、大まかな刑事事件の流れです。

弁護活動

 被疑者・被告人のための弁護活動としては、彼らの留置されている警察署へ面会に行き、事情を聴いて、今後の見込み等を説明したり、アドバイスをしたり、被疑者に有利な証拠を集めたり、被害者に弁償をして示談をしたり、これらの証拠を検察官に提示して、軽い処分を求めたりします。
 また、起訴をされて裁判になった場合にも、やはり同様に色々な説明・アドバイスをするほか、被告人に有利な証拠を集めて、裁判所に提出したり、今後の被告人の監督等をしてくれる人に、情状証人として裁判に出てもらったりなど、裁判の手助けをします。
 その他にも、手続を進めると同時に、被告人の身柄をなるべく早く解放してもらうための、保釈請求等の活動もします。
 時には、逮捕されるよりも前から、相談にのることもあります。

 ちなみに、「なぜ被疑者や被告人の弁護などするのか」「その必要はあるのか」と思う人も、いるかも知れません。
 しかし、本当に無実の人であれば、有罪となって刑罰を受けるいわれはないので、救われなければなりません。
 また、犯罪を行った人であっても、一応その人なりの言い分はあるのが通常で、その言い分も、最終的に通るかどうかは別として、適切に裁判所に伝える必要があります。
 更に、犯人であっても、実際に行った犯行の内容にそぐわない、不当に重い刑は受けるべきではなく、適正な刑罰でなければなりません。
 国家権力を背景に、広く捜査をして、証拠を集めることのできる警察や検察に対し、被疑者や被告人が、自分を守るために必要な活動を一人で行うのは(身柄を拘束されてしまえば特に)、非常に困難です。
 極端かもしれませんが、例えば、まったく身に覚えがないのに、逮捕をされて裁判にかけられ、周りの人は全員「お前がやったんだろう」と言っていて、自分の味方は一人もいないというような状況をご想像いただくと、それがどんなに恐ろしく、また心細いか、お分かりになるかと思います。
 そこで、憲法や刑事訴訟法では、適正な裁判が行われるようにするために、被疑者や被告人には誰しも、弁護人依頼権・選任権を保障しているのです。
 したがって、どんな被疑者・被告人であっても、弁護士の誰かは必ず、この弁護人の役目を果たさなければならず、必要不可欠な存在なのです。

 刑事事件の問題についても、お気軽にご相談ください。