労働審判は、労働契約の存否や、その他の労働関係に関する事項について、個々の労働者と事業主との間に生じた、民事に関する紛争(個別労働関係民事紛争)に関し、裁判所において、裁判官と、労働関係に関する専門的な知識経験を有する人とで組織される委員会が、当事者の申し立てにより、事件を審理し、審判を行う手続です。
 話し合いによる調停が成立して、解決できるような見込みのある場合には、その試みもなされます。
 これらの手続について定めたのが、労働審判法です。
 以下、簡潔にご説明します。

<申し立て>
 労働審判事件は、相手方の住所・居所・営業所・事務所の所在地を管轄する地方裁判所や、個別労働関係民事紛争が生じた、労働者と事業主との間の労働関係に基づいて、その労働者が、現在就業している、もしくは最後に就業した、その事業主の事業所の所在地を管轄する地方裁判所、または当事者が合意で定める地方裁判所で、行えます。
 相手方の住所・居所が、日本国内にない時や、住所・居所が分からない時は、その最後の住所地を管轄する地方裁判所で、行います。
 相手方が、法人その他の社団・財団の場合で、日本国内にその事務所・営業所がない時や、その事務所・営業所の所在地が分からない時は、その代表者や、その他の主たる業務担当者の住所地を管轄する地方裁判所で、行います。
 相手方が、外国の社団・財団の場合で、日本国内にその事務所・営業所がない時は、日本での代表者や、その他の主たる業務担当者の住所地を管轄する地方裁判所で、行えます。
 管轄と違う裁判所へ申し立てをした場合や、適当と認めた時は、裁判所は、事件を移送します。

 当事者は、個別労働関係民事紛争の解決を図るため、裁判所に対し、労働審判手続の申し立てをすることができますが、この場合は、申し立ての趣旨や理由等、必要事項を記載した申立書を、裁判所に提出して行います。
 申し立てが不適法な場合は、却下されます。

<審理>
 審理においては、裁判所は、労働審判官1人と、労働審判員2人で労働審判委員会を組織し、労働審判手続を行います。
 このうち、労働審判官は、地方裁判所が、その裁判官の中から指定します。
 労働審判員は、裁判所が、労働関係に関する専門的な知識経験を有する人の中から、事件ごとに指定する、非常勤の人員です。
 労働審判員は、中立・公正の立場で、職務を行います。
 事件の当事者等と一定の関係のある人は、労働審判員にはなれません。
 
 労働審判手続は、労働審判官が指揮をします。
 労働審判委員会の評議は、秘密とされ、決議は、過半数の意見によります。
 労働審判員や、労働審判員であった人が、正当な理由がなく、評議の経過や、労働審判官・労働審判員の意見等を漏らした時は、30万円以下の罰金に処せられます。
 また、労働審判員や、労働審判員であった人が、正当な理由がなく、その職務上取り扱ったことについて知ることのできた、人の秘密を漏らした時は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。

 労働審判官は、労働審判手続の期日を定めて、事件の関係人を呼び出します。
 労働審判官から呼び出しを受けた事件の関係人が、正当な理由がなく出頭しない時は、5万円以下の過料に処せられます。
 期日の経過の要領は、裁判所書記官によって、記録され、労働審判官が命じた場合には、調書も作成されます。

 労働審判委員会は、すみやかに、当事者の陳述を聴いて、争点・証拠の整理をしなければなりません。
 そして、労働審判手続では、特別の事情がある場合を除いて、3回以内の期日で、審理を終結しなければなりません。
 実際にやってみるとわかりますが、これはかなりタイトなスケジュールで、準備は大変ですので、心して行う必要があります。
 労働審判手続は、非公開です(ただし、関係人の傍聴が認められる場合もあります)。
 労働審判委員会は、職権で、事実の調査をし、かつ、申し立てまたは職権により、必要と認める証拠調べをすることができます。
 当事者や、利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対して、労働審判事件の記録の閲覧・謄写や、書類の交付等を、請求することができます。

 話し合いでまとまるような場合には、調停が成立しますが、その場合、その支出した費用のうち、調停条項の中に、費用の負担についての定めがないものについては、各当事者の負担となります。
 まとまらず、審理を終結する時は、労働審判委員会は、労働審判手続の期日に、そのことを宣言しなければなりません。
 労働審判手続の申し立ては、労働審判が確定するまで、その全部または一部を、取り下げることもできます。
 労働審判委員会は、事案の性質に照らして、労働審判手続を行うことが、紛争の迅速・適正な解決のために、適当ではないと認めるときは、労働審判事件を終了させることができます。
 この場合には、その労働審判手続の申し立ての時に、裁判所へ訴えの提起があったものとみなされます。

 労働審判手続の申し立てがあった事件について、訴訟も行われている時は、訴訟をしている裁判所は、労働審判事件が終了するまで、訴訟手続を中止することができます。

<労働審判>
 労働審判委員会は、審理の結果認められる、当事者間の権利関係・労働審判手続の経過を踏まえて、労働審判を行います。
 労働審判では、当事者間の権利関係を確認し、金銭の支払や物の引き渡し、その他の財産上の給付を命じ、その他、個別労働関係民事紛争の解決をするために、相当と認める事項を定めることができます。
 労働審判は、主文や、理由の要旨を記載した審判書を作成して、行われます。
 この審判書は、当事者に送達され、労働審判の効力は、当事者に送達された時に生じます。
 労働審判委員会は、相当と認める時は、審判書を作成する代わりに、全当事者が出席する労働審判手続の期日に、労働審判の主文と理由の要旨を、口頭で告知する方法によって、労働審判を行うこともでき、この場合には、その主文と理由の要旨が、調書に記載されます。
 口頭による告知の場合には、労働審判の効力は、告知された時に生じます。
 審判書を送達するべき場合に、当事者の住所・居所その他、送達をするべき場所が知れないこと等、一定の事情があるときは、裁判所は、決定で、労働審判を取り消します。

<異議の申し立て等>
 当事者は、審判書の送達や告知を受けた日から2週間以内に、裁判所へ、異議の申し立てをすることができます。
 裁判所は、異議の申し立てを不適法と認めるときは、却下の決定をしますが、適法な異議の申し立てがあったときは、労働審判は、その効力を失います。
 適法な異議の申し立てがない時は、労働審判は、裁判上の和解と同一の効力を有します。
 よって、相手がその通りに金銭の支払等をしない場合には、債権者は、強制執行の手続に進むこともできます。

 適法な異議の申し立てがあった時は、その労働審判手続の申し立ての時に、裁判所へ訴えの提起があったものとみなされます。
 こうして、以後は、訴訟の手続により、審理・判決(和解)等を行い、事件の解決へと向けて、進んでいくわけです。

 労働審判の問題についても、お気軽にご相談ください。