現在、裁判員裁判は、死刑または無期の懲役、もしくは禁錮に当たる罪に関する事件や、裁判所法26条2項2号に掲げる事件(死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役、もしくは禁錮にあたる罪のうち、一定のものを除いたもの)であって、故意の犯罪行為により、被害者を死亡させた罪に関するもの(殺人罪、傷害致死罪等)等の場合に、実施されています。
しかし、中には、「私は、裁判員裁判を受けるのは嫌だ、裁判官のみによる裁判を受けたいから、そちらを選ばせてくれ」という被告人も、いるかも知れません。
これについて判断をしたのが、最高裁判所平成24年1月13日判決です。

同事件の弁護人は、「裁判員法による裁判員制度には、被告人の権利が充分に保障されない等、多くの問題点があり、裁判員制度は、同制度による審理裁判を受けるか否かについて、被告人に選択権を認めていない点で、憲法32条、37条に違反する」と主張しました。
ちなみに、憲法32条は、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」、37条1項は「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」とそれぞれ規定されています。

しかし、上記判決は、
「憲法は、刑事裁判における国民の司法参加を許容しており、憲法の定める適正な刑事裁判を実現するための諸原則が確保されている限り、その内容を立法政策に委ねていると解されるところ、裁判員制度においては、公平な裁判所における法と証拠に基づく適正な裁判が、制度的に保障されているなど、上記の諸原則が確保されている。
したがって、裁判員制度による審理裁判を受けるか否かについて、被告人に選択権が認められていないからといって、同制度が憲法32条、37条に違反するものではない。」
として、この主張を退けました。

ということで、結論はご想像通りだったかもしれませんが、現在のところ、上記の罪に関する刑事裁判の審理については、裁判員裁判を受けることを免れることは、できません。