ここでは、夫婦・親子の間の、生活のための費用である、婚姻費用と養育費について、それぞれ簡潔にご説明します。

婚姻費用

 婚姻費用とは、文字通り、婚姻中の、生活をしていくための費用です。

 民法には、以下のような規定があります。
  ・直系血族や同居の親族は、お互いに助け合わなければならない(730条)。
  ・夫婦は同居し、お互いに協力し、扶助しなければならない(752条)。
  ・夫婦は、その資産、収入、その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する(760条)。
 これらの規定からみて、夫婦は、互いに生活費を分担もしくは支出して、双方が生活に困らないよう、手当をする義務があるといえ、婚姻費用の支払は、法律上の義務といえます。

 しかし、順調に夫婦の一方から他方に対し、支払がされていれば良いのですが、常にそう順調とは限りません。
 具体的には、例えば、夫から婚姻費用が支払われなくなり、妻子が生活に困ってきた、というケースです。

<協議>
 この場合、まず行うべきは、夫婦間での協議です。
 要するに話し合いであり、うまくいくならば、毎月支払う金額や支払方法等は、当事者間ですべて自由に決めることが可能です。
 しかしながら、必ずしもうまく話し合いがまとまるとは限りませんし、そもそも色々な問題があって、話し合いすらできない、その機会すら持てない、という場合も、珍しくはありません。

<調停>
 その場合には、家庭裁判所に、婚姻費用の分担を請求する調停(裁判所での話し合いの手続)を、申し立てることになります。
 申し立てのための用紙は、家庭裁判所の窓口に備え付けてありますし、裁判所のホームページにも載っています。
 また、申し立ての際には、戸籍等が必要になりますが、必要な書類や費用等についても、家庭裁判所の窓口で、教えてもらえます。
 それらを記入・押印し、書類を揃えて、必要な印紙や切手と共に提出すると、不備がなければ、申し立てが受理されます。
 それから、第1回の調停の期日が決まり、裁判所から相手方へ、関係書類と共に通知されます。
 相手も、その指定された期日に、裁判所へ来れば、話し合いが始まります。

 期日では、調停委員が間に入って、当事者双方の言い分を聴き、両者の調整を図って、極力話がうまくまとまるよう、進めてくれます(ただし、調停委員は中立で、どちらの味方というわけでもありません)。
 調停委員は、当事者の話を交互に聴きますが、一方の話を聴いている間、相手方は別の待合室にいますので、原則として、当事者がお互いに顔を合わせて、直接話し合うものではありません(当事者は、調停委員に対して、相手への意見や要望等を言うもので、調停委員を介しての話し合い、ということになります)。
 調停の際には、当事者双方が、給料明細や源泉徴収票、その他、毎月の収入に関する資料や、双方の支出する家賃・住宅ローンの額、その他毎月の生活費の支出についての明細、資料等を、提出していくことになります。
 その上で、毎月いくらずつ婚姻費用を支払うべきか、合意に向けて、話し合いが進んでいきます。
 1回の期日で決まらず、しかしまだ話し合いの継続の余地がある場合には、その後何回か、期日が継続されていきます。
 調停で決まる婚姻費用の額は、もちろん、当事者が合意するならば、どのような金額であっても自由ではありますが、通常はおおむね、双方の年収と、子の人数・年齢を元にした、いわゆる婚姻費用算定表による金額が、目安となってきます(審判や訴訟でも、おおむね同様です)。
 それをベースに、特殊な事情があれば、それらも考慮して調整される、という流れです。

 調停のメリットは、離婚等に詳しい調停委員が間に入って、話し合いを進められることですが、逆に、話し合いでの解決ができるだけで、判決のように、強制的に決めることはできませんので、相手がどうしてもその内容で合意をするのは嫌だと言えば、調停は不成立として、終了します。

<審判>
 調停で合意ができず、終了した場合は、自動的に、家事審判という手続に移行します。
 この場合は、双方の提出した主張・資料等に基づき、裁判官が、審判を行います。
 このようにして、最終的には、婚姻費用の請求について、明快にイエスかノーの結論を(請求が認められるならば、その金額がいくらなのかも)、出してもらえることになります。

 その後、婚姻費用が、調停での合意、もしくは審判の内容の通りに支払われない場合は、権利者は、裁判所に対し、義務者に履行を勧告するよう、申し出ることができます(履行勧告の手続)。
 また、権利者は、裁判所に対して、申し立てを行い、給料等を差し押さえる、強制執行の手続をとることも可能です(婚姻費用の額を、協議で合意したにすぎない場合は、公正証書の作成等をしていない限り、強制執行はできません)。
 

養育費

 養育費は、離婚後の、文字通り、子の養育費用です。
 婚姻中は婚姻費用、離婚後は養育費、という名称になります。
 しかしながら、両者は、名称だけではなく、内容も、少し違います。
 すなわち、婚姻中には、夫婦は、上記の通り、配偶者の生活も助ける義務があるため、婚姻費用には、子どものための生活費だけでなく、配偶者の生活費も、含まれています。
 他方、離婚後は、元配偶者とは、何の親族関係もなくなりますので、法的には、子どもを養育する義務しか残りません(元配偶者を扶養する義務は、なくなります)。
 したがって、同じ年収・子の人数・年齢であっても、婚姻費用よりも養育費の方が、支払の月額は小さくなります。
 また、婚姻費用は、婚姻が継続する限りは、通常は死ぬまで扶養義務は続くので、少なくとも配偶者の生活費に関しては、必要がある限りはずっと支払義務がありますが、養育費の支払期間は、子が成人に達するまでが多いです(大学卒業まで、とされる場合もあります)。

 こちらも、手続の流れとしては、上記の婚姻費用の場合と、ほぼ同様です。
 すなわち、毎月の支払金額が、協議で決まれば、それに越した事はありませんが、そうでなければ、家庭裁判所での調停~審判へと進みます。
 養育費の金額についても、調停や審判では、いわゆる養育費算定表の金額が、ベースとなることが通常です。
 また、裁判所で決着した場合には、その後履行がされなければ、履行勧告や強制執行の手続が可能であることも、同様です。

 婚姻費用・養育費の問題についても、お気軽にご相談ください。