親権とは、文字通り、親の子に対する権利であり、その内容は、民法818条以下に定められています。
以下、簡潔にご説明します。
<親権者>
成年(20歳)に達しない子は、父母の親権に服することになります。
子が養子である時は、実親ではなく、養親の親権に服します。
親権は、父母が婚姻している間は、父母が共同して行いますが、父母の一方が親権を行うことができない時は、他の一方が行うことになります。
父が認知した子に対する親権は、父母の協議によって、父を親権者(親権を行う人)と定めた時に限って、父が行います。
裏を返せば、それ以外の場合は、常に母親が行う、ということです。
<離婚と親権>
父母が協議上の離婚をする時は、協議によって、その一方を、親権者と定めなければなりません。
裁判上の離婚の場合には、裁判所が、父母の一方を、親権者と定めます。
親権は、離婚の際には、母親に認められることが多いといえますが、必ずそうなるというわけではありません。
それまでの親子の生活状況や、今後の生活の見込み、親や子の意向、子の福祉・利益その他の諸事情を総合的に考慮して、どちらにするのが良いのかが検討され、決せられます。
子が出生する前に、父母が離婚した場合には、親権は、母が行いますが、子の出生した後に、父母の協議で、父を親権者と定めることもできます。
父母の協議がうまくいかない時や、協議をすることができないような時は、家庭裁判所は、父や母の請求によって、協議に代わる審判をすることができます。
また、家庭裁判所は、子の利益のために必要があると認めるときは、子の親族の請求によって、親権者を、他の一方に変更することもできます。
<親権の内容>
親権者は、子の利益のために、子の監護・教育をする権利を有しますが、同時に、その義務も負います。
子は、親権を行う人が指定した場所に、その居所を定めなければなりません。
親権者は、監護・教育に必要な範囲内で、その子を懲戒することもできます。
親権者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について、その子を代表します。
ただし、その子の行為を目的とする債務が生じるような場合には、本人の同意を得なければなりません。
父母が共同で親権を行う場合で、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をしたり、子がこれをすることに同意した時は、その行為は、父母の他の一方の意思に反していた時であっても、有効となります(ただし、相手方が、悪意であった時は、除かれます)。
未成年者が法律行為をするには、親権者等、その法定代理人の同意を得なければならず、同意のない場合には、取り消すことができます。
ただし、単に権利を得たり、義務を免れたりするだけの法律行為については、その未成年者に不利益とはならないので、同意は不要です。
なお、法定代理人が、目的を定めて、処分を許した財産は、その目的の範囲内であれば、未成年者が自由に処分をすることができますし、目的を定めないで、処分を許した財産を処分する時も、同様です。
子は、親権者の許可を得なければ、職業を営むことはできません。
営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有するものとされます。
しかしながら、未成年者が、その営業に堪えることができない事情のある時は、その法定代理人は、その許可を取り消したり、制限したりすることができます。
親権を行う父や母と、その子との利益が、相反する行為については、親権者は、その子のために、特別代理人を選任するよう、家庭裁判所に請求しなければなりません。
また、親権者が、数人の子に対して親権を行う場合に、その一人と他の子との利益が、相反する行為については、親権者は、その一方のために、特別代理人を選任するよう、家庭裁判所に請求しなければなりません。
これらは、親権者が、自分の利益を図って、その反面として、子の利益が害されてしまうのを、防止するための規定です。
親権者は、自分のためにするのと同一の注意を払って、その管理権を行わなければなりません。
親権者とその子との間に、財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅した時から5年間債権を行使しない時は、時効によって消滅します。
子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において、子に法定代理人がないときは、この期間は、その子が成年に達し、または後任の法定代理人が就職した時から、起算されます。
<親権の喪失・停止、管理権の喪失>
父や母による虐待、悪意の遺棄がある時、その他父や母による親権の行使が、著しく困難・不適当であることによって、子の利益を著しく害する時は、家庭裁判所は、子、その親族等の請求によって、その父や母について、親権喪失の審判をすることができます(ただし、2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、除かれます)。
父や母による親権の行使が、困難・不適当であることにより、子の利益を害する時は、家庭裁判所は、子、その親族等の請求によって、その父や母について、親権停止の審判をすることができます。
この場合、家庭裁判所は、親権停止の原因が消滅するまでに必要と見込まれる期間、子の心身の状態、生活の状況、その他一切の事情を考慮して、2年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定めます。
父や母による管理権の行使が、困難・不適当であることにより、子の利益を害する時は、家庭裁判所は、子、その親族等の請求によって、その父や母について、管理権喪失の審判をすることができます。
なお、これらの原因が消滅した時には、家庭裁判所は、本人やその親族の請求によって、それぞれ親権喪失、親権停止、管理権喪失の審判を、取り消すことができます。
<親権・管理権の辞任・回復>
親権者である父や母は、やむを得ない事情のある時は、家庭裁判所の許可を得て、親権や管理権を辞退することができます。
また、この事情が消滅した時は、父や母は、家庭裁判所の許可を得て、親権や管理権を回復することもできます。
親権の問題についても、お気軽にご相談ください。