侮辱罪は、刑法231条に規定されています。

 条文上は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。」という、シンプルなものです。
 「事実を摘示しなくても」とあるのは、この直前の刑法230条に、名誉毀損罪の規定が置かれており、そちらが「公然と事実を摘示して」と規定されていることから、それと対比されているものと考えられます。
 すなわち、侮辱とは、事実を指摘して示さずに(ここが名誉毀損罪との違いです)、人の社会的評価を低下させ、名誉感情を害する表示を行うことをいいます。

 侮辱行為の具体例としては、例えば、被告人が自宅の内部で、被害者に対し、近隣住民に聞こえる大声で、「ごまかし男」などと言った事案で、侮辱罪の成立を認めた、東京高裁の裁判例があります。

 他方、例えば、「〇〇町の皆さんに訴える」と題する書面に、被害者が「あれは税金のためではない」「死んだ人間が税金で死んだかわかるか」「税務官吏に対する態度が失礼だ」などと言った、というような事実を記載した事案で、「被害者を非難した具体的事実を摘示し、これに基づいて、被害者を非難する抽象的文言を記載したものであるから、(侮辱罪ではなく)名誉毀損罪に該当する性質のものである」とした、名古屋高裁の裁判例があります。

 なお、名誉毀損罪との共通性から、名誉毀損行為が、刑法230条の2の特例に該当して処罰されない場合には、侮辱罪も成立しない、とされています。

 侮辱罪も、被害者等からの告訴がなければ、公訴を提起することはできません。

 侮辱罪は、上記の例からも分かる通り、日常の口論等からも発生しやすい犯罪類型であり、また、その法定刑の低さからも分かる通り、現実には、刑事事件にまで至る事は少ない犯罪といえます。