詐欺罪は、刑法第246条に規定されています。
詐欺とは、人をだまして、お金や物、その他の利益を、移転させることです。
振り込め詐欺などが典型例です。

法定刑は10年以下の懲役刑とされており、実務上の留意点としては、詐欺は、罰金刑がないということです。
したがって、ひとたび詐欺を行ってしまうと、罰金で済まされるということがありませんので、一度逮捕をされると、その後は不起訴か起訴(刑事裁判になること)しかありません。
これは窃盗罪と異なる点であり、窃盗罪よりも重い罪であるといえます。
人をだますという悪質性を考慮してのことと思われます。

だます行為というのは、作為だけでなく、不作為も含みます。
なお、例えば商売の場合等では、商品等について、リップサービスのような若干の誇張を伴うような場合も、ある程度は存在しうるため、社会通念上許容されない程度のだます行為が、詐欺罪に該当してくるものといえます。

だまし取る対象としては、お金が典型的ですが、お金に限られず、例えば商品等の物や、債務を免除させるというような、経済的利益等も含まれます。
なお、「物」については、たとえ自己の所有物であっても、他人が占有しているような場合には、他人の「物」とみなされ、それをだまし取れば、詐欺罪が成立します。

また、だまされる人と、それによって物や利益を交付(移転)する人とは、同一人でなくてもよく、別々の人であっても、だます行為から移転する行為までの間に、因果関係がある限りは、詐欺罪が成立します。
だます人と、それによって利益を受ける人とが、同一人である必要もありません。

配偶者(夫や妻)、直系血族(父母や祖父母、子や孫)、同居の親族との間で、詐欺を行った場合には、その刑は、免除されます。
また、これらの親族以外の親族との間で、詐欺を行った場合には、その被害者等からの告訴がなければ、公訴を提起することはできません。
これは、親族という、血縁の近い者同士の間での行為であることから、そのような事件の解決は、親族同士で行うことが望ましく、法はなるべく立ち入らない、という観点からの規定です。
したがって、被害者とは親族ではない共犯者がいるような場合には、その人については、適用されません。

実務上、比較的よく受ける質問としては、債権回収のご相談の中で、「契約をしたのに相手がお金を払ってくれない」「途中で支払が滞った」「これは詐欺罪ではないか」というようなものですが、詐欺罪は、基本的に契約等のあった時点において、だまし取る意思(故意)が伴っていなければなりません。
そのため、上記のような振り込め詐欺のように、明らかな嘘によってお金をだまし取る場合は、成立に問題はありませんが、例えば通常の取引のように、相手がその時にはお金を払うつもりで、実際に払えるだけの財力や見通し等があって契約をしたような場合には、この「だます意思」の存在に疑義が生じ、犯罪は成立しない可能性が高いです。
そのため、契約後に相手が少しずつ払っていたが、お金がなくなって払えなくなったというような場合等には、詐欺罪といえるかはなかなか難しく、警察等に受理してもらうのも、厳しいといえます。