少子高齢化や人口の減少等に伴い、特に地方で、空家が増加しています。
空家は、適切な管理がなされずに放置されると、防災、衛生、景観等、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼすことになるため、地域住民の生命、身体、財産を保護する必要があると同時に、空家等の活用を促進する必要もあることから、基本法としての本法が定められました。
以下、ざっと内容を記します。

本法において「空家等」とは、建築物またはこれに附属する工作物で、居住その他の使用がされていないことが常態であるものと、その敷地(立木その他の、土地に定着する物を含みます)をいいます(国または地方公共団体が所有し、または管理するものは除かれます)。
また、本法において「特定空家等」とは、そのまま放置すると、倒壊等、著しく保安上危険となるおそれのある状態、または著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている状態、その他、周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である状態にあると認められる、空家等をいいます。

まず、空家等の所有者または管理者(以下「所有者等」といいます)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めなければなりません。

市町村も、空家等対策計画の作成と、これに基づく空家等に関する対策の実施、その他の空家等に関する必要な措置を適切に講ずるよう、努めなければなりません。
国土交通大臣と総務大臣は、空家等に関する施策を、総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針(以下「基本指針」といいます)を定めなければならず、基本指針を定め、またはこれを変更しようとするときは、あらかじめ関係行政機関の長と協議をしなければならず、基本指針を定め、またはこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければなりません。
市町村は、その区域内で、空家等に関する対策を総合的かつ計画的に実施するため、基本指針に即して、空家等に関する対策についての計画(以下「空家等対策計画」といいます)を定めることができ、空家等対策計画を定め、またはこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければなりません。
市町村は、空家等対策計画の作成、変更、実施に関する協議を行うため、市町村長(特別区長を含みます)のほか、地域住民、市町村議会の議員、法務、不動産、建築、福祉、文化等に関する学識経験者、その他の市町村長が必要と認める者をもって構成する協議会を、組織することができます。
都道府県知事は、空家等対策計画の作成、変更、実施、その他空家等に関し本法に基づいて市町村が講ずる措置について、その市町村に対する情報の提供、技術的な助言、市町村相互間の連絡調整、その他必要な援助を行うよう努めなければなりません。

市町村長は、その市町村の区域内にある空家等の所在や、その所有者等を把握するための調査、その他空家等に関し、本法の施行のために必要な調査を行うことができ、一定の場合には必要な限度で、その職員や委任をした者に、空家等と認められる場所に立ち入って、調査をさせることもできますが、その時は、その5日前までに、その空家等の所有者等に、その旨を通知しなければならず(通知することが困難であるときは除かれます)、立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければなりません。
この立入調査を拒み、妨げ、忌避した者は、20万円以下の過料に処せられます。
空家等の所有者等には、ここが実際に関係してくる点です。

市町村長は、固定資産税の課税、その他の事務のために利用する目的で保有する情報であって、氏名その他の空家等の所有者等に関するものについては、本法の施行のために必要な限度で、その保有に当たって特定された利用目的以外の目的のために、内部で利用することができます。
都知事は、固定資産税の課税その他の事務で、市町村が処理をするものとされているもののうち、特別区の存する区域においては都が処理するものとされているもののために利用する目的で、都が保有する情報であって、特別区の区域内にある空家等の所有者等に関するものについて、その特別区の区長から提供を求められたときは、本法の施行のために必要な限度で、速やかに当該情報の提供を行わなければなりません。
市町村長は、それ以外にも、本法の施行のために必要があるときは、関係する地方公共団体の長その他の者に対して、空家等の所有者等の把握に関して必要な情報の提供を求めることができます。
要するに、自治体の長が、本法の内容を実行するために、空家等の所有者等の情報を得たり、利用したりすることができる、ということです。

市町村は、
①空家等(建築物の販売・賃貸業者が、販売・賃貸するために所有または管理する、一定のものは除かれます)に関するデータベースの整備、その他空家等に関する正確な情報を把握するために、必要な措置を講ずるよう、努めなければならず、
②所有者等による空家等の適切な管理を促進するため、これらの者に対して、情報の提供、助言、その他必要な援助を行うよう努めなければならず、
③空家等やその跡地(土地の販売・賃貸業者が、販売・賃貸するために所有または管理するものは除かれます)に関する情報の提供、その他これらの活用のために必要な対策を講ずるよう、努めなければなりません。
市町村長は、
①特定空家等の所有者等に対し、その特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採、その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置しても、倒壊等著しく保安上危険となるおそれ・著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却は除かれます)をとるよう、助言・指導をすることができ、
②助言・指導をした場合に、なおその特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、その助言・指導を受けた者に対して、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採、その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができ、
③勧告を受けた者が、正当な理由もなくその勧告に従う措置をとらなかった場合に、特に必要があると認めるときは、その者に対して、相当の猶予期限を付けて、事前に一定の事項を記載した通知書を交付して、意見書や自己に有利な証拠を提出する機会を与える等した上で、その勧告に係る措置をとるよう、命ずることができます。
この場合、通知書の交付を受けた者は、その日から5日以内に、市町村長に対して、意見書の提出に代えて、公開による意見の聴取を行うことを請求することができ、その場合、市町村長は、上記の措置を命じようとする者、またはその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければなりません。
市町村長は、この意見の聴取を行う場合には、命じようとする措置や、意見の聴取の期日・場所を、期日の3日前までに本人らに通知するとともに、公告しなければならず、本人らはこの意見の聴取に際して、証人を出席させ、自己に有利な証拠を提出することができます。
市町村長は、上記の必要な措置を命じた場合に、命じられた者がその措置を履行しないときや、履行しても十分でないとき、履行しても定められた期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、または第三者にこれをさせることができます。
また、市町村長は、必要な措置を命じようとする場合において、その措置を命じられるべき者を過失なく知ることができないとき(上記の助言・指導または勧告が行われるべき者を、過失なく知ることができないため、上記の手続によって命令ができないときを含みます)は、その者の負担で、その措置を自ら行い、またはその命じた者や委任した者に行わせることができ、この場合には、相当の期限を定めて、事前にそのようにする旨を、公告しなければなりません。
市町村長は、上記の命令をした場合には、標識の設置、その他一定の方法により、その旨を公示しなければならず、その標識は、その特定空家等に設置することができます。
市町村長の上記命令に違反した者は、50万円以下の過料に処せられます。
以上の点も、空家等の所有者等が、現実に影響を受けうる部分です。

国と都道府県は、市町村が行う、空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の、適切かつ円滑な実施に資するため、対策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充、その他の必要な財政上の措置を、講じなければなりません。
また、国と地方公共団体は、その他に、市町村が行う、空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の、適切かつ円滑な実施に資するため、必要な税制上の措置等を、講じなければなりません。

以上の通り、本法では、地方公共団体等の公的機関がなすべき大枠と共に、空家等の所有者の義務・負担等も定められていて、問題のあり得る空家に関しては、これに従って、具体的な措置がとられるものと思われます。