相続

 人が亡くなると、相続が開始します。
 相続というのは、亡くなった人(被相続人)がその時点で持っていた権利や義務を、一定の相続する資格がある人(相続人)が受け継ぐ制度です。
 ただし、例外はあり、たとえば、生活保護を受ける権利や養育費を払う義務など、そもそも被相続人個人にのみ認められ、他人に移ることが予定されていない権利や義務は、受け継ぎません。

<相続の順位>
 第一順位の相続人は、原則として夫または妻(配偶者)と、子供達です。
 配偶者は、常に相続人となります。
 もし、子供達がいないか既に死亡しているような場合には、孫などがいれば代わりに相続しますが、いない場合は、配偶者と被相続人の両親が相続人になります。
 両親も既に死亡しているような場合には、祖父母などがいれば代わりに相続しますが、いない場合は、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
 兄弟姉妹が既に死亡している場合でも、その子供達がいれば代わりに相続しますが、いない場合は、配偶者が全財産を相続します。

<相続分>
 それぞれの相続人が受け継ぐことのできる財産の割合(相続分)は、全員が同じというわけではなく、相続人が誰なのかによって異なります。
 この割合は民法で決められており、相続人が配偶者と直系卑属(子や孫など)の場合は1対1、配偶者と直系尊属(両親や祖父母など)の場合は2対1、配偶者と兄弟姉妹の場合は3対1となっています。
 このように、それぞれの相続人の取り分の割合は、原則として民法で決められています。

<遺言>
 しかしながら、被相続人にもそれぞれの思いがあり、自分が死んだら「妻には法で決められた割合よりもっと多く財産をあげたい」「長男にもっとあげたい」「孫にあげたい」とか、場合によっては「親族でない人にあげたい」という人もいるかもしれません。
 そのような場合に利用するのが、遺言です。
 遺言は、15歳以上であればすることができますが、民法の定める方式によらなければなりません。
 主なものとしては、自分で手書きする方式(自筆証書遺言)や、公正証書または秘密の証書による方式などがあります。

 自筆証書遺言は、特段の費用はかかりませんが、すべて手書きでしなければならない上に、日付や氏名・印鑑などの漏れがあってはならず、訂正等の方法もきちんと決められています。
 また、なくしたり隠されたりする危険もあります。
 原則として、遺言を発見した相続人等は、相続が開始したことを知った場合、遺言を開封しないですぐに家庭裁判所に提出し、確認を求める手続(検認の手続)をとらなければなりません。

 公正証書遺言は、2人以上の証人の立ち会いのもとで、公証役場の公証人によって、遺言の内容が確認されます。
 これは、この遺言は間違いなくこの人がこのような内容で作りましたよという、いわば公的なお墨付きを与えるものです。
 そのため、後で相続人の間で争いが生じた場合でも、この遺言は信用性が高いものとして、厚く扱われます。
 また、公証役場で保管されますので、なくしたり隠されたりする心配もありません。
 ただし、自筆証書遺言に比べると費用はかかります(が、遺言をするならば、この方式がお勧めです)。

 秘密証書遺言も、公証人や2人以上の証人の立ち会いのもと、公証役場で手続をして保管される方式ですが、公正証書遺言との大きな違いは、公証人も遺言の内容を見ないことです。
 したがって、遺言の内容に形式の不備がないかどうかを公証人にチェックしてもらえないので、注意が必要です。

<遺留分>
 被相続人が遺言をする場合、その内容を自由に決めることはできますが、相続人には、少なくとも民法で決められた一定の割合を取得する権利が認められています。
 これを遺留分といい、「相続人に遺留する分」というわけです。
 したがって、たとえば仮に、「自分が死んだら全財産を友達のAさんにあげる」という遺言をしたとしても、妻や子供などの相続人がいる場合には、彼女達にも最低限の取り分(遺留分)が認められるので、相続人としては、相続の開始やそのような贈与等があったことを知った時から1年以内であればこの権利を主張することができ(遺留分減殺請求)、主張後は少なくともこの分は手に入ることになります。

<遺産分割>
 遺産分割とは、文字通り被相続人の残した財産(遺産)を、相続人の間で分けることです。
 誰がどの遺産をどれだけもらうかということを、相続人の間で話し合って決めます。
 上でも述べたように、一応、民法でそれぞれの相続人の相続分は決められていますが、相続人全員が話し合い、意見が一致すれば、法とは別の分け方をすることもできます。
 これは、仮に遺言がある場合でも基本的には同様です。
 ただし、たとえば、相続人ではない人に遺産をあげるという遺言がされているような場合には、そのもらえる人の意向を無視して勝手に相続人だけで遺産を分割することはできません。

 もし分割の話し合いがまとまらない時は、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てます。
 調停は、家庭裁判所で調停委員が間に入って、当事者双方の言い分を聞き、時には提案をしたり調整をしたりして、当事者の話がうまくまとまるよう進めてくれる手続です。
 調停を申し立てると、裁判所が相手に通知をして呼び出しをし、その期日に調停委員は当事者の話を交互に聞きます。
 対立する当事者は、基本的には別々の待合室で待機をしますので、相手と直接顔を合わせて話し合うわけではありません。
 調停のメリットは、遺産分割などに詳しい調停委員が間に入って話し合いを進められることですが、判決のように強制的に結論を出すことはできませんので、当事者がどうしても嫌だといって合意ができなければ、調停は不成立として終了となります。
 その場合は、審判手続へ進み、裁判官が遺産に属する物や権利の種類・性質、各相続人の年齢、職業、生活の状況、その他一切の事情を考慮して、遺産を分割する審判を行うことになります。

<相続放棄>
 相続放棄は、相続人が、自分は相続をしないということを家庭裁判所に申告することです。
 なぜ放棄をする必要があるのかというと、それは上記のように、相続が権利だけでなく義務をも受け継ぐものだからです。
 すなわち、被相続人が亡くなる時に多額の借金を抱えていた場合、相続にはそれもワンセットになってきますので、相続放棄の手続をとれば、借金を受け継がずに済みます。
 ただし、当然ながら、権利も義務も全部まとめて放棄をすることになりますので、借金だけを放棄して、財産や権利だけを都合よく受け継ぐことはできません。
 相続放棄は、相続が開始されたこと、及びそのために自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申告をして行います。
 これをしないでいると、自動的に相続を認めたことになってしまいますので(単純承認)、注意が必要です。
 また、相続人が遺産を一部でも処分してしまったり、隠したりしたときも、単純承認をしたものとみなされます。
 この単純承認や相続放棄の他に、相続によって得られた財産の範囲内で被相続人の借金などを払えばよく、それらを払って余りが出た場合にはそれを相続できるという手続(限定承認)もあります。

 相続の問題についても、お気軽にご相談ください。